ベイエリア日記

ベイエリアでプロダクトマネージャーやってる中年おっさんのブログ

チームでものをつくるということ

人気絶頂を迎えながら、音楽性の違いで解散するバンドだったり、商業的に大成功している芸術家がいきなり作風を変えてみたりすることがある。次元は違うけれども、最近何となく彼らの行動というのが合理的に思える。自分の価値観に合わないことをやらされるのはとんでもなくきつい。それが好きなことだったらなおさらだ。でも組織に所属していると匙を投げるというのは難しい。

 

自分は問題の集合体からプロダクトのビジョンを作ってそれを形にする仕事をしている。プロダクトマネージャーは最終決定者だということはよく言われているけれども、それは全部を自分で決めていいというわけではない。会社に雇われている以上、コンセンサスとったり、経営層の意見を反映したり、エンジニアとリソースの調整をしたり、元から描いていたものからずれて行く作業を繰り返して行く。比喩的に言えば、アーティストがデッサンをキャンバスに起こし、そこに色を載せて行く作業が直線的で漸進的であるとするならば、会社におけるプロダクト開発は自分のデッサンに思いっきりグラフィティをぶち込まれような感じで、時として曲線的で停滞的(時として後進的)である。もちろん初期アイディアを更によりよいものにして行くようなアドバイスをもらうこともあるけれども、もしプロダクトマネージャーがアプローチする問題のエキスパートだとしたら、プロダクトマネージャー以上の知識を持ち、情熱を傾けて、相応の時間を使ってその問題に取り組むことができる人は少ないのだから、正直ノイズ以外の何物でもない。自分の価値観にそぐわないことをするのだから、気持ち悪いことはない。正直、辛い。結構辛い。

しかしちょっと幽体離脱をして、プロダクト開発に携わる人に憑依して考えてみると、また違った景色が見えてくる。携わる側としても、自分の価値観に合わないことはやりたくない。だからもしプロダクトマネージャーがゴリ押ししてきて、自分の考えが全否定されたりすれば全くやる気も出ないし、どんなにアイディアが優れていてもデザインがだめだったり、バグが多かったり、細部に渡って綻びが出てくる。だから、どれだけ理想や最適解からずれることをするだけであったとしても、コンセンサスをとって前に進むことは必要だったりする。なぜなら自分一人でものを作るわけじゃないのだから。

そう考えるとすごく大事なことがいくつか見えてくる。

1.ビジョンやミッションが共有できている、賛同されている組織

ここがないと色々なところがぶれる。右に行きたい人、左に行きたい人が集まれば全然前に進まない。当たり前だけどまずはそれができる組織に行くことが大事。多様性は大事だけど、それはビジョンやミッションに対する多様性ではなく、そこにどう到達するかについて様々な見方があるという話である。

2. 何事にもコミットしお互いを尊敬する文化

今の会社には"Disagree and commit" (反対するし、コミットもする)という言葉がある。どれだけビジョンやミッションが共有され、日々の行動に落とし込まれていても、そこへの到達の仕方は人それぞれ。結果的に選べる道は一つなのだから、どれだけ腑に落ちなくても決まったことには歯をぐっと食いしばって、全力でコミットするということが必要。反対意見に対してもリスペクトを持って対応しないとこれはなかなかできない。リスペクトがない組織はどんだけビジョンやミッションが共有されていてもいいチームにはならないから。

当たり前のことだけど今更ながらとても重要だと思う。