ベイエリア日記

ベイエリアでプロダクトマネージャーやってる中年おっさんのブログ

podcast

Podcastがかなり注目を集めている。Podcast自体は特に目新しいプロダクトではない。特に普及が始まったのはiOS が2004年にPodcastアプリをデフォルトインストールして誰でも簡単にPodcastが楽しめるようになってからだが、そこからの十何年間はPodcastは基本的に無料で楽しむコンテンツというポジションを変えずに来た。一つにはPodcast自体がプラットフォームを持たず完全に民主化された状態が続いていたというのもある。映像ではYoutubeTiktokのようなお化けプラットフォームがコンテンツを集約することによって広告配信プラットフォームとしてのポジションを確立したが、Podcastを聴くことが出来るアプリはただRSSフィードと呼ばれる情報を読み込むことでPodcastの情報を更新したり実際に音源を聴いたりする役目しか果たしていない。どれだけかなりの数のユーザーをアプリが獲得したとしても、そもそもそのアプリでないと聴けないわけではないし、無料で聴けるコンテンツに広告を載せることは難しい。そのためPodcastのクリエイター達の収益減はスポンサーだったりPatreonなどのクリエイター支援サイト経由でのファンドだったりする。そんなことで大きな地殻変動もないままに来たPodcastは特にここアメリカで大きな変貌を遂げている。a16zのレポートinvesting in the podcast ecosystem in 2019(https://a16z.com/2019/05/23/podcast-ecosystem-investing-2019/)によれば、2013年に最低週に一度Podcastを聴いた大人は7%だったが、2019年の調査ではなんと3倍以上の22%となっている。a16zのレポートにはGoogleでの「podcast」のサーチボリュームの時系列推移が出てるけど。これが最近の人々の関心を物語ってる。Audibleがドライバーに受け入れられたように、Podcastも運転中に聞くには最適なコンテンツ(長くて、曲送りなどが不要)なので、すでにドライバーには2013年以前から受容されていたと考えるなら、ここ10年ほどの伸長率は運転中以外にPodcastを聴く人が増えたことによる。同じa16zのレポートによれば家でPodcastを聴く人の割合は48%でダントツ1位。運転中に聞く人は26%で2番目に多い。僕はランニング中Apple WatchPodcastを聴くんだけど、運動中に聞く人は4%だった。意外に少ない。レポートによればこのトレンドシフトはハードとソフトの両面から起こったと見ている。この5年間でEcho、Google Homeのように全米にスマートスピーカーAirpodsのように常にオーディオにアクセスできるデバイスが普及したこと、コンテンツも充実したことをあげている。まだまだインターネット全体の広告額($69bn)に比べれば微々たるものだが、呼応してPodcastでの広告額は$69mmから$200mmに伸長した。


そんな流れを更に加速させたのがSpotify。今年に入ってPodcastに特化したプロダクションのGimletを$2MM、Anchorを$1.4MMで立て続けに買収したことが大きなニュースになった。CEOのDaniel Ekも明確に非音楽コンテンツも含めた“Audio First”を以下のように語っている。


More than 10 years ago we founded Spotify to give consumers something they couldn’t get — music any time, anywhere, and at the right price. Along the way, we broke the grip piracy had on our industry and restored the growth of global music through paid on-demand streaming. I’m proud of what we’ve accomplished, but what I didn’t know when we launched to consumers in 2008 was that audio — not just music — would be the future of Spotify.


Spotifyの動きはある意味必然である。先日発表されたSpotifyの2019年第二四半期の決算発表でSpotifyはサブスクライバーが29%伸びて232mmとなったと発表したが、有料会員数は第1四半期に比べて8mmしか伸びなかった。音楽ストリーミングはAppleAmazonYoutubeと競争が激化し、レッドオーシャンなので非音楽コンテンツに取り組み新たな収益源を模索するのは自然な流れ。それに音楽は権利関係が複雑で、Spotifyはこれまでにレコード会社や出版社と何度も訴訟沙汰になっている。非音楽コンテンツに対するモチベーションはそういうところにもあるのではないかと思う。そんなSpotifyの目論見を競合が看過するわけがなく、AppleもオリジナルのPodcastの製作を計画中との噂が流れてSpotifyの株価が下落するということがあった。


個人的にはSpotifyの目論見が羽ばたくのかは正直わからない。というのもそもそも音楽配信Podcastは全く別物。ストリーミングはアーティストという無数のクリエイターがいるから、数千万曲の楽曲がユーザーに提供できるが、Podcastの製作となると別物。映像ではNetflixが1兆円という目玉が飛び出る金額を映像製作やライセンシングに使い、1000以上のオリジナル作品を作っている。その中には大ヒットするものもあればニッチにしか受けないもの、そして当然ながら大失敗が含まれる。要するにとてもコストがかかる。映像に比べれば桁が違うくらい製作コストは低いが、Spotifyが本気でPodcastにコミットするならそれくらいやらないといけない。むしろ、そうすることで優位性が築ける。アクセル踏むならまだ周りが二の足踏んでいる今なのかなと。


a16zがレポートを出すくらいなのですでにPodcastは“a thing”になっている。SpotifyがObama夫妻とオリジナルのPodcastを製作することで合意済み。

2020年はPodcastonomyの年かな。


ちなみに自分はビジネススクール受験時代にTOEFLの勉強に2倍速でコンテンツを聴きだしたのがPodcastを聴き始めるきっかけとなった。その時はまだBloombergに買収される前のBusiness WeekPodcastとScience Americaのポッドキャストを聴いていた。それからだいぶご無沙汰していたが、2015年くらいからまた聴き出して、最近はランニングう中や通勤中に欠かせないものとなっている。以下がおススメ。


バイリンガルニュース

マミが日本語で、マイケルが英語でニュースを取り上げるPodcast爆笑問題が取り上げて一躍有名に。LGBTやテクノロジーの問題など、あまり日本のニュースが取り上げないニュースが話題となる。絶対マイケルはマミが好きだと思っていたけど、マミは誰かと結婚しちゃったね。


Rebuild.fm

SF在住エンジニアの宮川さんがお届けするリビルドは個性的なゲストを毎回招いて、ハードウェア、ソフトウェア、ゲーム、アニメ、などについてかなりディープなトークを展開する。僕は2014年に宮川さんがバイリンガルニュースにゲスト出演したのをきっかけに知った。はくろうさんのゲームにまつわる話が濃い。矢文案件とか数々の名言も生まれてる。ああもう初めて聴いてから5年かあ。


Dave Chang Show

今僕が毎週欠かさず聴いてるPodcastの1つ。ニューヨークのレストランMomofukuのオーナーであるDavid Changがホスト。フードインダストリーのことだったりMSGのことだったり多岐に渡る。彼の交友関係も広いのでNomaのReneなどゲストもすごい。


a16z Podcast

泣く子も黙るベンチャーキャピタルファームAndreessen and HorowitzのPodcast。blockchainやdeep learningといったテクノロジーの話から、スタートアップの組織、報酬設計に関する話までテクノロジー界隈にいる人なら聴きたいPodcast


Recode/Decode

有名なテクノロジージャーナリストのKara Swishcerがホスト。著名なファウンダーや投資家などをゲストに最新のテクロジーやマクロトレンドに切り込む。


Planet Money

僕は実は最近知ったけど、NPRの老舗Podcast。名の通りお金にまつわる話。Planet MoneyのProducerは前述のGimlet MediaのファウンダーであるAlex Blumberg。僕はPlanet Moneyでサーモンの寿司はそもそも最近になってノルウエーからの働きかかけでできたもので、寿司屋の板前さんは食べないということを知った。