ベイエリア日記

ベイエリアでプロダクトマネージャーやってる中年おっさんのブログ

大切なものって何?

サンフランシスコのチームに異動する前から、一緒に働いている同僚がいる。年齢は自分より10才くらい年上で、前の奥さんとの間にこの9月に大学に入学したばかりのお嬢さんがいる。正直最初はTPMなのに適当だなぁと思っていた(TPMというのはPMとコンビになってプロジェクトのタイムラインを引いたり、影響のあるAPIやサービス間の調整をするなどプロジェクトマネージャー的な役割を果たすポジション)。ただすごい明るい人だし、いつも前向きだし、一緒に仕事をしているうちにあまり自分も気にならなくなってきていた。それ以上に、彼が日本のアニメ好きなのもあってデスク越しにアニメの話をしたり、仕事以外でも彼の音楽イベントに行ったりする仲になっていた。

そんな彼の奥さんはSlackという、この界隈ではおそらく知らない人はいないくらい有名なコミュニケーションサービスを作っている会社のChief Product Officer。Slackはユニコーンで昨年5月に250億ドルを調達した段階で5100億ドルものバリュエーションにもなっている。IPOは確実と言われていて、このまま上場すれば彼女の資産はすごいことになるはず。マッチョなシリコンバレーでは女性のCPOは多くないので、Sarah SwisherのRecode/Decodeにゲスト出演したり、Bloombergに出たりと、そんじょそこらの芸能人より有名な人を奥さんに持っているわけだ。

そんな陽気な彼から先週「ちょっとコーヒーでも飲みに行こうよ」と誘われて、Philz Coffeeに行った。いつも大体フェリーの時間が近づく15時くらいになると"See you in a bit"って言って帰っていくんだけど、最近は割と長く会社にいるし、コーヒーに誘ってくるし、正直ちょっと変だなと思いながら。コーヒーを買って(寒いのにアイスコーヒー)「ホモデウス」の話をしながら、フェリービルまで散歩して、会社に戻る途中に「実はやめるんだよね。今月末で。」と。「やっぱかぁ。」と思ったけど、こっちは人の動きも激しいし、別に短期間で会社をやめることは珍しい話じゃないので特に驚きはなかった。むしろ彼が今後やりたいと言っていることを聞いて、絶対に応援したいと思ったくらいだ。そうしたら、彼の奥さんが今日Twitterで「Slackやめます!」宣言。思わずチャットで「え、奥さんやめるの?」と言ったら。「そうそう」と。その後、「IPOあるかもしれないのに、今やめるってすごいね。」と言ったら「まあそれもあるけど、子供と時間を過ごしたいし、お互いやりたいことがあるからね。」と。それにしても、正直最初に彼が辞めると聞いた時は、「奥さんいるしね」と思っていたので、かなり驚いた。

もちろん彼ら夫妻はエンジェル投資もするくらいだから、すでに十分な資産を形成していると思う。そうだとしても数十億も転がり込んでくるようなチャンスに固執せず、自分の大切なことに向かって進んでいく彼らはかっこいいなと思った。

でも、自分の大切なものってなんだろう。スタンフォードビジネススクールのエッセイみたいだけど、やっぱ今一度考えないと。